【おすすめブックレビュー】東野圭吾さん最新刊『白鳥とコウモリ』ネタバレなし感想

白鳥とコウモリ ネタバレなし レビュー 感想

今回は2021年4月に初版が発行された、東野圭吾さん最新作『白鳥とコウモリ』についてレビューします。

アマゾンレビューで書こうかと思ったのですが、あまりにも書きたいことがありすぎて、ブログのレビューに書くことにしました。

白鳥とコウモリ ネタバレなしのあらすじ

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2017年秋、善良な弁護士 白石健介(しらいしけんすけ)が東京で死体となって発見されます。

刑事の五代努(ごだいつとむ)とその部下である中町が捜査を続けていく中、一人の人物が犯行を自供します。

一見、事件は解決したかのように思えましたが、被告の自供にはおかしな点が多く、検察、警察、被害者家族、加害者家族は謎だらけの迷宮に引きずり込まれていきます。

物語の舞台は東京の下町と愛知県。この2つの都市を様々な登場人物が長い時間をかけ行き来し、今まで他人だった登場人物どうしが交叉してきます。

そして『白鳥』と『コウモリ』。光と影は、お互いの立場をゆっくりと変えていきます。


東野圭吾さんファンとしておすすめの1冊

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500ページ以上のボリューム

 

私は長らく東野圭吾さんのファンで、今まで出た本は全部ではないですが、ほとんど読んできています。

『白鳥とコウモリ』は、そんな私が東野本として文句なしにオススメできる1冊です。

520ページはそれと大容量ですが、東野さんの著作としては、『白夜行』など800ページ以上あるものもあります。

日数を取って少しずつ読もうと思っていたのですが、300ページを超えるあたりから先が気になって仕方ない展開となり、一気に読み終えてしまいました。

正直、途中、「何か真相にたどり着くまで遠回りしている気がするなぁ」と思ったのですが、読み終わってみれば、520ページ全ての話が、ストーリーの大切な要素でした。

 

東京と愛知県を様々な人物が行き来する

 

登場人物は東京の下町と愛知県を交互に行き来します。東京ドームや東京駅など実際の地名や、読売ジャイアンツ、中日ドラゴンズなどが出てきて、しかもそれがけっこう事件の鍵を握っていたりします。私は野球も好きなので、ここらへんは没入できました。

この小説は、ご飯を食べたりお酒を飲むシーンがとにかく多いです。

まぁ、カフェや飲食店で物語の重要人物が働いているからそれは必然なのですが、東野さんは文章で読者にお腹を空かせるのが上手です。私は禁酒中にも関わらず、本を読んでいる最中、何度もビールが飲みたくなりました。

 

主人公が存在しない

 

この物語には、主人公という主人公が存在しません。

まぁ読み返してみれば、この人とこの人の物語だったのかなぁ…という思いもありますが、明確な主人公というのはあえて設定されていないようです。

というか、主人公が誰とか、途中まで気にならないくらい、それぞれの登場人物が魅力的で、『謎』を抱えています。

何か怪しい人ばかりです。




この本を買うべき人、オススメしない人

みんなの疑問 冒頭分 イラスト

この本をオススメしたい人

 

1,読書に長く時間がとれる人

 

先にお話しましたが、この本は500ページ以上とかなりのボリュームです。

長い時間をとって読める人はオススメです。

すべての登場人物とその会話は、ストーリーでは大切な要素ですが、謎の解明に無関係な話もあります。

真犯人を追うよりも、そういったものをじっくり楽しめる人にはおすすめです。

 

2,小説を読んで感動したい人

 

私自身、本を読んで泣くことなんてあまりないし、ぶっちゃけこの本にも感動要素は期待していなかったのですが、登場人物に感情移入してしまい、最後10ページくらいは胸がしめつけられる思いになりました。

また、小説を読んで感動したい、泣きたい・・・と思っている人にオススメです。

きっと、読み終わった後に、あなたの心に残るものがあるはずですよ。

 

この本をオススメしない人

犬の散歩 帰りたくない

1,過去の東野さん作品とやたら比較する人

 

他の人のAmazonレビューを観ていたのですが、『白夜行』や『容疑者Xの献身』など、過去の大ヒット作品とやたら比較して、評価を下げようとしている人がいます。

その人達はいったい東野さんの作品に何を期待しているんでしょうか??

書いている著者は同じでも、書いた時期も年齡も違うわけだから、同じような作品ができるわけないし、同じような作品だったら誰も見ません。

私自身はそれぞれ別作品として楽しんでいますし、この『白鳥とコウモリ』もかなり楽しかった部類です。

しかし小説じたいの楽しみよりも、作品の出来とか、何か異質なものを期待する人にはこの本はオススメできません。

 

たとえば、あなたはディズニーランドへ行ったことがおありですか?

ディズニーランドに初めて行った時の感動と、2回目に行った時の感動を比較しても、多くの人が初めての時の感動を超えられないでしょう。

それと同じです。

過去の感動体験と比較して、それを超える体験を求めても、よほどの事がない限りそれを超えられないのです。そして超えられない経験を味わうたび落胆します。

とはいえ、東野圭吾さんは新作が発売されるたびに、過去作品と比べられては酷評をつけられたりするのが宿命です。

文学をそういう楽しみ方しかできない人にはこの本はオススメしません。

 

2,どんでん返しとか、そういったものを過剰に期待する人

 

推理小説といえば、終盤でびっくりするほどの新展開、どんでん返しとか、そういったものも楽しみの一つです。

『白鳥のコウモリ』にも、全く予想できない真犯人や展開が出てくるなどの要素はあります。

私自身、「まさか・・・このヒトが・・・そんな」と思ってしまう展開がありました。

しかし多くのシーンでは、登場人物が試行錯誤するさまを見せて、あえて読者にも、真相を究明する体験を追わせているような感じさえ受けます。

徐々に氷が溶けていく・・・そんな感じです。それがこの小説の醍醐味なのだと思います。

なので、話が進むうちに、推理小説としての先は予想できてしまうかもしれません。

誰もが予想だにしない衝撃の急展開、大ドンデン返しなどを期待している人は、オススメできません。

 

買おうか迷っている人は文句なしにオススメ

物件選びの楽しさ、ワクワク感 疑問 スピリチュアルって何

ネタバレを書かずに、魅力を伝えるのってめちゃくちゃ難しいのですが、純粋に小説、文学を楽しみたい人ならば、絶対にソンしない作品です。

東野さんは、文章力、表現力などがズバ抜けています。

繰り返しになりますが、私自身、これだけ分厚い小説を、一気読みしてしまったのは驚きです。

帯には東野版罪と罰とか書いてますけど、ドストエフスキーの罪と罰よりも、こちらの方が好みです。

また時が経って、内容を忘れたらもう一度読みたいですね。